はじめに

ESP-WROOM-02を使ってWebアプリケーションを開発する際にスケッチ内にHTMLコーディングすると

  • コードが煩雑になり追加・修正が大変
  • 実行時にHTML部分もRAM上に展開する為、RAMの消費が増えてしまう

という問題があります。
ESP-WROOM-02のSPIFFS機能を使ってHTMLをファイルシステムに保存、変数のみスケッチからHTMLに渡す方法で開発するとこれらの問題を解決できます。ここではその手順をご説明します。



開発環境

■ ハードウェア

  • ESP-WROOM-02

■ ソフトウェア

  • Arduino IDE 1.8.5
  • esp8266 by ESP8266 Community 2.3.0



ファイルシステムアップローダーのインストール

1.HTMLファイルをESP-WROOM-02にアップロードするために「Arduino ESP8266ファイルシステムアップローダー」をインストールします。 こちらのページを開きます。
Arduino ESP8266ファイルシステムアップローダーのインストール画面
2.以下のZIPファイルをダウンロード、解凍します。「ESP8266FS」というフォルダができます。
Arduino ESP8266 ファイルシステムアップローダーダウンロード画面
3. PCのArduinoスケッチドキュメントフォルダに「tools」という名前のフォルダを作成します。
Arduinoスケッチドキュメントフォルダにtoolsフォルダ作成
4.2で解凍した「ESP8266FS」フォルダごと「tools」フォルダ下にコピーします。

5. Arduino IDEを再起動します。ツールメニューに「ESP8266 Sketch Data Upload」が表示されます。以上でインストール完了です。

Arduino IDEのメニューにESP8266 Sketch Data Uploadが表示される




サンプルプログラムを書き込む

1.サンプルプログラムをこちらからダウンロード、解凍します。「spiffs_master」というフォルダができます。

SPIFFSサンプルプログラムのディレクトリ構成

2.spiffsフォルダのスケッチ「spiffs.ino」をArduino IDEから開きます。スケッチメニューの「マイコンボードに書き込む」をクリックしてESP-WROOM-02に書き込みます。

3.ESP-WROOM-02を再起動後、ツールメニューの「ESP8266 Sketch Data Upload」をクリックします。dataフォルダの「index.html」、「site.css」、「eeprom.js」、「jquery.min.js」ファイルがESP-WROOM-02のフラッシュメモリにアップロードされます。
※「Flash Size」は「2M(1M SPIFFS)」を選択します。
※ シリアルモニタは閉じて下さい。

ESP8266 Sketch Data Uploadをクリックしてdataフォルダのファイルをアップロードする




サンプルプログラムの解説

本サンプルはWebブラウザからESP-WROOM-02のEEPROMに性別と名前を登録するプログラムです。

ESP-WROOM-02 SPIFFSサンプルプログラム処理の流れ

サンプルプログラムの動作の大まかな流れは
① アクセスポイントモードでWi-Fi接続
② ESP-WROOM-02のファイルシステムからindex.htmlを読み出す
③ EEPROMに保存されている性別・名前をindex.htmlに表示
④ index.htmlから性別・名前を変更してEEPROMに保存

ブラウザからESP-WROOM-02のWebサーバーに 「http://192.168.5.1」とリクエスト送信すると、スケッチspiffs_httpd.inoのhandleFileReadメソッドがコールされます。handleFileReadメソッドではESP-WROOM-02のファイルシステムからindex.htmlを読み出しブラウザに返します。以下のコードは、handleFileReadメソッドでindex.htmlを読み出している部分です。

File file = SPIFFS.open(path, "r");
size_t sent = server.streamFile(file, contentType);
file.close();

pathに"/index.html"、contentTypeに"text/html"が入ります。SPIFFSクラスのopenメソッドでファイルシステムからindex.htmlを読み込み、ESP8266WebServerクラスのstreamFileメソッドでindex.htmlをHTTPレスポンスとしてブラウザに返します。

index.htmlがロードされると、eeprom.jsの以下のコードを実行します。

$(document).ready(function(){
  $.ajax({
    type:     'GET',
    url:      'eeprom',
    dataType: 'json',
    success:  function (data) {
                for (var category in data) {
                  for (var key in data[category]) {
                    $('#'+category+'-'+key).val(data[category][key]);
                  }
                }
              },
    error:    function (xhRequest, textStatus, errorThrown) {
                alert(textStatus + " : " + errorThrown);
              }
  });
});

eeprom.jsでは、ESP-WROOM-02のWebサーバーにAjaxによる非同期リクエスト「http://192.168.5.1/eeprom」を送信、json形式でレスポンスを受信、index.htmlの id で "category-key"と指定されているタグに値をセットします。

 

json形式のレスポンス
{"person":{"gender":0,"username":"テクノべインズ"}}

 

eeprom.jsの「category」は "person"、「key」は "gender" と "username" を示しています。index.htmlのコードでは、性別のselectタグの id に "preson-gender" 、名前のinputタグの id に "person-username" と指定し、eeprom.jsで受信した値をセットしています。

<div class="title2">性別</div>
<select id="person-gender" name="person-gender">
<option value="0">男性
<option value="1">女性
</select>
<div class="title2 required">名前</div>
<input type="text" id="person-username" name="person-username" maxlength="50" required="required"/>




最後に

今回、ESP-WROOM-02のSPIFFS機能を使ってHTMLをファイルシステムに保存、変数のみスケッチからHTMLに渡す方法について解説しました。この方法で開発すると、スケッチと静的ファイルを分けてコーディングすることができるので開発効率が上がります。また、Webページの容量が大きくなることによるRAM消費の心配もなくなります。ESP-WROOM-02でHTMLコーディングする際のご参考にしていただければ幸いです。



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