「総額表示」への消費税対応義務化について


消費税の「総額表示」の義務化に伴い、
洋服などの値札や店舗商品棚のプライスカード、チラシなどの宣伝広告など
販売価格の表示は2004年4月1日までに総額表示にすべて変更する必要があります。
また総額表示に対応できないレジ変更が必要となります。
今回の変更は、レジの消費税率設定変更とは異なります
多くの店舗で大きな作業を伴う場合がありますので、あらかじめご検討のうえご準備ください。

 

概要

2003年3月末の改正消費税法により、「販売価格を税込みにする」ということになりました。
義務付けされた変更への対応は、税率変更のような単純な変更だけでは対応できません
すべての商品や商品棚の値札付け替え・レジ価格マスタの再設定・レシート印刷形式変更・レジ価格データの再登録が必要になるなど、販売方法やご使用のPOS・レジ環境によっては非常に大きな作業期間を要する場合があります。
今回の改正は「総額表示への変更」と「消費税額計算の特例廃止」という2つの変更項目が行われますので注意が必要です。
また、2003年10月に本件について税務署から新たに経過処置が発表されていますのでご注意ください。
今回の税制改正の変更内容をご確認のうえ、あらかじめ対応を準備する必要があります。

 

内容

  • 販売に際しての価格表示はすべて、税が含まれている価格での表示となります。
    商品に販売価格の値札をつけている場合、外税価格のものはすべて変更する必要があります。
    雑誌、書籍、衣料品などでは販売価格の表示やタグがつけられていますので、それらはすべて変更が必要です。
    値札ラベルシールなど商品に直接販売価格の表示を行っている場合や、多くの場合商品棚などに売価を表示していますので、
    これまで外税価格のものは、2004年4月1日までにすべて変更する必要があります。
    カタログや価格表などで2004年4月1日以降も使用されるものは変更が必要です。
    →財務省では2004年4月1日以降も利用される商品カタログ等も、事前に対応しておくことを指導しています。
    →業者間取引などに限っては、従来の外税による取引も可能です。(詳しくは税務署発行の資料等をご確認ください。)


  • 対応は2004年4月1日までに
    2004年4月1日までに店頭や広告などの単価表示を総額表示に切り替える必要があります。
    店頭に並んだ商品により消費税表示方法が異なると、お客さんも店員さんも混乱しますので、閉店後などにいっせいに「総額表示」へ棚札取替えを行うなどの対応が必要となります。
    現実的に店舗内の値札・棚札などの一斉取替えが難しい場合などは、新しい税込み価格を大きく書き、税抜き価格をあわせて併記するなどにより、新旧ラベルが混在してもお客様が迷わない値札・棚札を作成し、順次切り替えていくのも1つの方法と思われます。
    また、今後税率が変更された場合、今回と同じ作業が発生します。
    今後のためにも、きちんとした対応策や対応手順を検討しておくとよいでしょう。

  •  

  • 一般に商品販売を行う場合、外税での表示はなくなります。
    基本的に従来の内税計算方式と同じですが、内税・外税のように税を分離して計算する考え方はありません。
    消費税額をあわせて表示する事自体は任意ですが、その場合、総額表示の金額を示した上で、金額中には○○円の消費税額が含まれていると言う内容の表示になります。

    本体価格9,800円、消費税額490円の商品の場合、消費税を含んだ価格が10,290円となり、総額表示を行う場合、以下ような表示方法が適当とされています。

    10,290円
    10,290円(税込)
    10,290円(税抜9,800円)
    10,290円(うち消費税等490円)
    10,290円(税抜9,800円、消費税等490円)

    (注) 消費税等を含めた総額(上記の例示の場合の10,290円)がはっきり表示されているかどうかがポイントとなりますので、例えば「9,800円(税抜)」や「税抜9,800円+税」といった表示では、総額表示には該当しません。

    従来の総額を表示しない、「消費税抜きの本体価格9,800円消費税額490円」などの従来形式での表示方法は誤った表示となります。
    分離した本体価格を表示する場合、「10,290円(消費税抜き本体価格9,800円消費税額490円)」など総額を表示したうえでの形式であれば問題ないと思われます。

  • また消費税法施行規則第22条第1項が廃止されますが、経過処置1の適用を受ける場合、消費税額をあわせて表示する必要があります。
    →2003年10月に税務署から経過処置について追加の案内が出されています。

     

  • 外税レジは価格単価テーブルおよび計算方法を内税に変更する必要があります。
  • 2004年4月1日以降は基本的に商品の表示価格は総額方式としなければなりません。
    国税庁のWeb資料では商品選択時(値札等)と代金の決済時(レシート等)の表示のうち、総額表示義務の対象は商品等の選択時の価格表示とされており、精算終了後に発行されるレシートや領収書等は総額表示義務の対象とならないとなっています。
    しかし、財務省のWeb資料で書かれているように、レシート内容が店舗表示と異なることが発生するとお客様に不信感を持たれたり、外税レジでは下記のように計算結果に多くのずれを発生するためにクレームの元となり、現実的にはレシート表記も総額表示対応書式に切り替える必要があると思います。

    外税計算を使用した場合の問題点の例
    1個88円の外税商品は総額表示においては92円という表示となる。(1円未満 四捨五入または切り捨ての場合)
    総額表示で 92円の商品を10個買った場合、お客さんは920円と考えるが、従来の外税のままのレジでは @88 * 10個 * 1.05 = ¥924 となる。

    お客様は1円でも多く支払うことになる場合、敏感です。
    →今回の総額表示は、消費税は納税時まで5%消費税の丸め誤差を商品販売価格にて吸収することになります。

    レシート例

      ショップテクノベ湯島店
      平成16年4月1日

      3 ×

      157
      カップラーメン   471  
      --------------------
      合計 471  

      (内税

       22 )
      現金お預かり 500  
      お釣り  29  
      ショップテクノベ湯島店
      平成16年4月1日

      3 ×

      150
      カップラーメン   450  
      --------------------
      小計 450  

      税(5%)

       22
      --------------------
      合計 472
      現金お預かり 500  
      お釣り  28  
      ショップテクノベ湯島店
      平成16年4月1日

      3 ×

      150
      カップラーメン   450  
      --------------------
      小計 450  

      税(5%)

       22
      --------------------
      合計 472
      (内税 22 )
      現金お預かり 500  
      お釣り  28  
      総額表示対応 OK 旧形式(総額表示非対応) NG
      旧形式(総額表示非対応) NG

注意: 

総額表示の商品を設定した場合などで、レシート合計欄に「含消費税額 ¥0」とか「消費税(0%)」などと印字出力されてしまうケースがあります。
特に旧式(消費税発足当時や出荷後に消費税対応を行ったような機種)のレジで、消費税項目が1項目しかないレジの場合、商品価格に税額を加え総額表示とし、別途計算する外税額の設定を0%として総額表示に対応しようとした場合などでこの問題が発生するようです。
消費税額欄をレシートに印字しないように設定できる場合、非課税商品を扱っていない場合は計算上のつじつまは合うのですが、「消費税額 ¥0」や「消費税(0%)」などとレシート印字してしまうと(実際には消費税額を徴収しているので)誤ったレシートとなります。

 

  • レシートごとの消費税額を合計して、預かり税額として納税している場合注意が必要です。
    消費税法施行規則第22条第1項により、レシートの預かり税額を合計して消費税納税の申告に用いることができました。
    今回総額表示となり、それに伴い同施行規則が廃止となります。
    多くの事業者の場合、基本的に1年間の課税総売上額の5/105から仕入れの消費税を控除したものが納税額となります。(簡易課税非課税事業者は除く)
    しかし今回の変更は消費税計算の基礎となる部分であり、多くのレジや会計システムで対応が早急には難しいために、2003年10月に税務署から経過処置が発表され、いくつかの条件に合致できる場合、当面の間上記「レシートの預かり税額を合計」方法での税額計算が認められました。また、レジシステムの変更対応が間に合わない場合、総額表示への表示を行っていることが条件で、最大3年間までは上記計算方法でも適用できる経過処置があります。詳細は資料をご覧ください。

 

  • 2004年4月1日からは年間売り上げ1000万円から課税事業者になりなります。

    今回の改正では、非課税業者と判定できる基準課税売上高が現行の3000万円から1000万円以下と大幅に引き下げられます。
    この改正により、今までは非課税業者であった事業者のうち、かなり大きな割合の方が課税対象事業者になると思われます。

    これまでは課税事業者となる年間売り上げが3000万円以上と比較的高額でしたので、個人や家族経営など比較的規模の小さなお店や個人事務所・個人事業者などでは非課税事業者として適用されていた場合が多いと思います。
    課税対象の判定はその時点の利益でなく、2期前の決算上の売上げで行いますので、年間1000万円と言う金額は小さなお店や事業者の方でも自分の給料、店舗や仕入れ経費を支払っていくためには、到達する金額ではないかと思われます。
    売上げベースで考えると、1日売上げ3万3千円 * 25日 * 12ケ月で990万円となります。
    課税事業者となると、消費税の事業者届出および毎年(場合によっては中間申告も)の申告手続きが必要となります。

     

  • 簡易課税の適用上限が2億円から5000万円引き下げられます。
    簡易課税適用が大幅に引き下げられます。
    簡易課税の場合、決められた売上区分に従い消費税の税率を定率で求めることができます
    、簡易課税適用外の場合、基本的に1年間の課税総売上額の5/105から仕入れの消費税を控除したものが納税額となります。


レジ運用・設計の総額表示対応例

これまでの資料をまとめますと以下の変更が必要ではないかと思われます。
下記はレシートの印刷も総額方式対応で行う方法として検討しています。

総額方式での販売金額マスタデータの作成

まず、事業者としての端数処理のルールを決める必要があります。

値札、棚札を作成、変更するために新しい販売価格マスタが必要です。

日本全体でこのような販売価格の調整が発生するため、仕入れ価格自体も変更される可能性があり、仕入れ先に価格変更されていないかの確認・チェックも、新しい販売価格マスタ作成時に、あらかじめ行っておいたほうがよいと思われます。
(2004年3月末は混乱が予想されます。)

税を加算した結果、多くの値付形式である480円とか98円などの商品の表示価格が、504円とか103円といったものになってしまいます。
売れ筋商品などによっては、単純な×1.05による税率計算でなく、値付け価格自体の見直しが必要です。


インストアコードの対応

バーコードの中に販売価格を含むインストアコードのラベル発行やマーキング等で、新旧形式商品混在時への対策。
生鮮品と比べ洋服などでは販売期間が長いので、混在の可能性が高くなる。
ラベル発行機とレジとの価格連動のチェック。

  • インストアマーキングされたバーコードに含まれる金額が外税なのか内税なのか。
  • 発行するバーコードで内税・外税の区別ができるのか?
    (同じ商品でも税区分変更により新たなコードを割り付けるなどのルール付け)
  • 計量式ラベル発行機が内税対応できるのか?(本体質量-税込価格計算の消費税丸め誤差)

 

 

レシートへの単価表示を総額方式のマスタデータとする。

値引き割引等は税込みでの扱いとして同様に扱える。
マスターが総額方式に切り替わっていれば、計算自体は内税と同じである。(非課税商品は残る。)

 

レシートの合計欄の書式を変更する。

合計部分印刷内容の変更が必要。
また、合計に含まれる税額を表示してある場合、どのように計算・表示されているか確認しておいたほうがよいと思われます。


総合計での消費税合計計算方式を変更する。

これはレジでの単純な問題でなく、締め計算の問題となります。
従来の、消費税計算の丸めた後の金額をレジで加算していく消費税額計算方式は、消費税法施行規則第22条第1項が廃止により使用できなくなりました。(注:経過処置あり)
そのため、決算時(納税のための計算時)に課税売上金額合計 ÷ 105 * 5 で預かり消費税額の金額を計算することになります。
 

切り替え時期と並行運用

従来方式と新形式の価格を2重化するのか。
また、店舗ごとでの切り替え時期および棚札や値札等で混在時の対策。(外税併記の総額表示値札など)
切り替えまでの間の並行運用期間の取り扱い。(レジのほか金額入りインストアマーキングバーコードの対応など)

 

参考

 

本ページの情報は、レジ作成の参考のために上記資料を弊社にてまとめたものです。
実際に作業を行う場合は、税務署や国税庁、財務省などの正式な資料をご参照ください。
なお経過処置等の修正は随時行っていますが、内容等で誤った点などがございました、ご指摘いただけますと幸いです。
また、ご不明な点がございましたら税務署や税務相談室、ご担当の税理士様へお問い合わせください。

Last Update : 2011/09/12


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